Interview人のチカラ

空間づくりとは
生涯現役で
向き合いたい。

自分のカラーを
出すことで、
成果はちゃんと出る。

ブロック遊びに夢中になるなど、子供の頃から何かを作ることは大好きでした。形のないところから少しずつ形ができあがっていく過程に強く惹かれるものがあったんです。 そんな私が空間づくりの道に進むきっかけとなったのは、とある職人さんとの偶然の出会いです。1日2万円というバイト代に目がくらみ、その職人さんの手伝いをすることにしたんですが、やってみるとこれがすごく楽しくて。主にカメラメーカーの展示会と写真展の手伝いをする仕事だったんですが、北は札幌、南は福岡まで。学生ながらに全国を飛び回る経験をさせてもらえたんです。しかも、仕事が終わった後は大人たちと遊び放題。(笑) 空間づくりという仕事のある意味での多面的な楽しさを経験できたことが、今の仕事へ進みたいという気持ちの第一歩になったことは間違いありません。 ただ、入社当時は当然、失敗ばかりで落ち込むことも多かったです。しかし、学生時代に遊び呆けてしまったという後悔もあり、ここらで一度「泥水を飲む覚悟でやらないといけない」と決意を固め挑戦し続けていました。 そんな日々の中であるとき、ふとした気づきが生まれたんです。それは、自分のカラーを出した案件ほど、結果的にクライアントからの信頼が得られていたという気づき。それからは、自身のアイデアや視点を積極的に提案し、独自の価値を見せようとするスタンスを貫いていきました。いい意味で言いなりではなく、クライアントのパートナーになるために意見をしっかりと言う。 自分のカラーを出すというスタンスは、今でも大切にしています。

トラブルのときこそ、
チャンスと思って挑む。

仕事は、企画から設計、施工、現場運営まで、空間づくりのすべてのプロセスに関わります。そして、そこには時としてトラブルがつきものになります。ただ、実は私は、トラブルを楽しむタイプなんです。どんなに準備をしていても、想定外のことが起こるのが現場です。それをどう解決するかが、私たち空間づくりのプロの腕の見せどころになってきます。 例えば、特に印象に残っているのは、コロナ禍の展示会で出展者が激減したときのことです。開催直前にキャンセルが相次ぎ会場がスカスカになるという状況が生まれた中で、出展者や来場者の満足度をどう保つか。みんなが頭を悩ませていました。 そんな折に、歴史あるこの展示会のアーカイブを展示するというアイデアがクライアントから出てきました。出展者で溢れてしまう平時には目を向けてもらえない、展示会自体の価値に改めて目を向けてもらい、理解を深めてもらうチャンスにしようというものです。そこで、この素晴らしいアイデアを実現するための空間の設えをご提案。結果として主催者側にも非常に気に入っていただき、信頼関係がより強固になるきっかけとすることができました。

また、こういったトラブルを解決する過程では、チーム全体の結束が強まり、一体感が生まれやすくなります。だからこそ、プロジェクトが成功するたびに一人では決して味わえない強い達成感が得られるんです。トラブルはむしろ、最高の結果を得るために必要なスパイス。そうやって前向きに思考と行動を進めていくという経験を重ねることが、自身の成長に大きくつながっていると実感しています。

日常の中にこそ、
お客様を満足させる
ヒントがたくさんある。

先程の話にも関連しますが、私の強みは「引き出しの多さ」だと思っています。普段から様々な建築物やデザインに触れ、それを現場での対応力として活かしています。 電車の中吊り広告や駅の看板、街中の建物など、普段の生活の中からインスピレーションを得ることも多いです。そうした日常的なインプットが、いざというときに力を発揮するんです。ただ、私の場合は仕事のためにやっていると言うよりは、昔からの趣味というか、癖でやっているという感覚の方が近いんですが。(笑)

また、クライアントだけではなく、チームや協力会社に対しても「引き出しの多さ」は武器になります。例えば、デザイナーが出した案をさらに発展させたり、現場の意見を取り入れて調整したりする際にも、多角的な視点からコミュニケーションを取ることができるからです。これができるようになると、どんな困難な状況でも最善の結果が出せるようになってきますね。もちろん、すぐにできることではないですが、自分の持っている引き出しを増やし続け最大限に活用していくことが、お客様やチームから信頼を得る上では重要になってくると思っています。

リアルに人の心を
動かせる唯一の仕事。
だから、
現場に立ち続けたい。

工芸社には、自分がお客様の一番のパートナーになるという意思をもったメンバーが揃っています。これは我々の先輩の代から脈々と受け継がれている、ある種の文化なんだと思います。マネージャー職という立場になった今の私も、「お客様を大切にする」という工芸社の根底の部分を、しっかりと普段の仕事を通して後輩たちに受け継いでいかなければいけないと強く感じています。

一方、激動の時代の中で、我々も変化と進化を追い求めていかなければなりません。その中で、マネージャーとして後輩たちと接する機会が増えたからこそ、彼らと一緒に新しいことにチャレンジしたいという気持ちがどんどん増してきています。具体的なプランはまだ思考中ですが、空間づくりの仕事が本質的に持つ“リアルに人の心を打つ”という魅力をアップデートさせられたらと思っています。若い人たちの感性を取り入れながら、工芸社にしか魅せられない空間づくりのカタチを追求できたらいいなと。 そういった意味でも、私はプレイングマネージャーとして現場に立ち続けたいと思っているんです。この仕事は私にとって、生涯を通じて取り組む「挑戦」です。これからも若い人たちと一緒に現場に立ち続け、常にお客様にとって最適な空間を提供していきたい。生涯現役。これが私の目標であり、この仕事に対する揺るぎない想いです。

企画営業伊東 潤一