Interview人のチカラ
いい空間は
楽しむことで
生まれる。
空間づくりとは、
何もない場所に
一晩で価値を
つくること。
この仕事に就いたのは正直、偶然でした。 学生時代は法学部に在籍していましたし、就職活動でも当初は空間デザインや展示会の仕事に興味があったわけではありません。 ただ、就職活動中にも続けていた百貨店のアルバイトで、催事場を通りかかるたびに感じていた「空間が変わる瞬間」に強く心を惹かれたんです。 夜には何もなかったはずの空間が、朝になるとまるで別の空間に生まれ変わっている。この体験が当時はすごく不思議で面白く感じました。そこから興味を持ち、偶然工芸社の求人を見つけて面接を受けました。面接で「あなた自身の発想次第で、どんな空間もつくり上げることができる」と言われ、それならやってみようと入社を決めました。 入社してからは、展示会やイベントの空間設計、運営に携わっています。月に平均7~8の案件を同時に抱えています。仕事の性質上、寝る間を惜しんで現場に立ち会うこともありますが、どの案件もやりがいがあり、すべてが今の自分のチカラになっています。
必死にやれば、
ハッタリさえ誠になる。
この仕事は毎回が新しい挑戦です。経験を積んでも、毎回異なる課題が出てくる。何一つとして同じことはありません。それが面白い反面、ときには失敗をしてしまうこともあります。 例えば、ある展示会でのこと。大手自動車メーカーのブース設計を担当した際、短い納期の中で何度もデザイン変更を求められ、スタッフと共に夜通し対応したことがありました。最終的にはクライアントから高評価をいただけましたが、調整力や即応力が問われる仕事だと改めて痛感しました。
また新しい挑戦として、復興支援をテーマにしたドキュメンタリー番組を作るプロジェクトで、いきなりスポンサーの立場でプロデュースをすることになったのは今でも忘れられない経験です。正直、最初はどうやって進めたらいいのかまったくわかりませんでした。会議では「こいつ、何者だ? 」という視線を感じながら、台本を見て右往左往する日々。嘘も方便ではないですが、時にはハッタリで誤魔化したりもしていました。ただ、それを嘘ではなく誠とするために、わからないことは徹底的に調べ、経験者に聞きながら必死に仕事を進めましたね。最終的に番組が完成し、お客様から感謝の言葉をいただいたときは、苦労の分だけ喜びもひとしおでした。番組を録画して何度も見てしまうくらいに。新しい挑戦は常に、新しい学びと喜びをもたらしてくれます。
お客様の機微まで
捉えられなければ、
いいものは
生み出せない。
私がこの仕事で最も大切にしているのは、お客様の満足です。特にまったく新しい、これまでにやったことのないものをお客様と一緒にカタチにしていく過程にやりがいを感じます。お客様の要望を一つひとつ汲み取り、デザイナーへどう伝えるか。デザイナーと共にカタチにしたものを、今度はお客様へどう提案するか。それぞれの架け橋となり、その反応をダイレクトに感じながら新しいものをつくっていけることがこの仕事の醍醐味だと思っています。
もちろん、相手に合わせて伝え方もそのたびに工夫しています。同じデザインでも伝え方ひとつでまったく違う受け止められ方をしてしまうので。なので、伝えるための努力は惜しみません。例えば、リモート会議が普及した今でも、直接会って打ち合わせをすることを大切にしています。やはり、言葉からだけでは読み取れない表情や、その時々の空気を掴むことで、その後の進行やお客様との関係が良くなることを経験として知っているからです。 コミュニケーションが円滑に行けば次の提案がやりやすくなるし、お客様も安心して任せてくれるようになる。細やかな心配りが仕事の質を上げ、結果的にお客様の満足に繋がると信じています。
いい成果に
つなげる方法は、
楽しむこと。
この仕事を続けてこられた理由は、やっぱり楽しさですね。どんなに忙しくても、楽しむことを忘れずにやってきました。周りから「楽しそうに仕事をしているね」と言われることも多いですが、実際、そうやって仕事をした方が良い成果に繋がると感じています。 それは工芸社で働いている人たちを見ても同じです。ここはプロフェッショナルが集まった会社で、一人一人が高い意識を持って仕事に取り組んでいます。普段は基本的にそれぞれが独立して仕事をしていますが、ひとつの目標に向かうときの団結力は他社には真似できない強みだと思います。言うなれば、それぞれが個人商店としてのプロ意識を持った人たちの集合体。 そういったベテランたちの中に若い人たちのチカラが加わってきて、これからの工芸社がだんだんと形づくられていく様子を目の当たりしている今がすごく誇らしいです。みんな楽しそうに仕事をしていて。
その中で私は所属長として、いい意味で部下たちの顔色を見て毎日を過ごしています。顔色を見ていれば担当している案件がどう進んでいるのか見て取れるんです。そして上手く行っていないなというときにだけサポートをしたり、相談に乗ったりするようにしています。 ただ最近は自分なりの解決策を見つけようとしている姿も見られてきて。巣立っていく雛たちを見ているようで少し寂しい気持ちもあるんですが、頑張っている若い人たちの姿は素直に頼もしいです。そんな若い人たちがさらに成長し、お客様を第一に考えるという想いを次の世代に繋げてくれることを心から楽しみにしています。
企画営業久保 賢司
